会員 平川良信
環境先進国デンマーク視察報告
その4

バイオガス/ゴミのコージェネ発電

 

 

 


バイオガスプラント

 


ゴミのコージェネレーション施設

(注)「コージェネ発電」は、正確には「コージェネレーション」というべきでしょう。ここでは、一般の方でもイメージしやすいように、この言葉を使用しています。

 農業国デンマークらしいのが、家畜の糞尿による、バイオガス・コージェネ発電(発電+余熱利用による温水供給)です。
家畜の糞尿を醗酵させると、メタンと二酸化炭素を主成分としたバイオガスが発生します。
 メタンは、天然ガスの主成分であることからわかると思いますが、バイオガスを燃やすことにより、かなりなエネルギーが得られます。デンマークでは、それをコージェネ発電に利用します。バイオガスを取った残りは、肥料として利用します。全てを有効に利用しているのです。

 エネルギー資源の有効利用で見逃せないのが、ゴミの有効利用です。
 昔は、デンマークでは分別せずにゴミを埋め立てていました。その中には生ゴミも含まれており、それが醗酵してメタンが発生します。埋め立ててから20年はメタンが発生するそうです。そのメタンを集めて、コージェネ発電に利用しています。
 1997年、可燃ゴミ(環境負担にならない・リサイクル対象でないもの:汚れた紙、廃材、絨毯、生ゴミ等)の埋め立てが禁止され、可燃ゴミを燃やしてゴミ・コージェネ発電をするようになりました。日本の火災事故で問題になったRDF発電ではありません。デンマークでは、燃えるゴミを集めてそのまま燃やすことにより、コージェネ発電をしています。ゴミ・コージェネ発電所では、地域により、麦わらやウッドチップも一緒に燃やしてエネルギーを得ています。

  日本では、従来、灰にして体積を減らすのを目的に、「燃えるゴミ」を燃やして来ました。2003年4月から施行されたRPS法(2010年までに全電力の1.35%を新エネルギー(再生可能エネルギーなど)で賄う)を機会に、「燃えるゴミ」で発電するところが増えて来ましたが、目標を「燃えるゴミ」だけでかなり達成できたため、風力発電など他の再生可能エネルギーに力が入らなくなるという皮肉な結果になっています。
 デンマークは、バイオガス発電、埋立ゴミからのメタン発電、ゴミ発電など、利用できるものは徹底的に利用して、効率のよいコージェネ発電をしています。その上で、2030年までに、全電力の50%以上を風力発電で賄う計画を立てています。


  ところで、麦わらなど植物を燃やした時に二酸化炭素が発生しますが、この二酸化炭素は地球を温暖化させるでしょうか? 答はNoです。この二酸化炭素は、植物が光合成で空気中から吸収したものが、もとの空気中に戻っただけです。そしてその二酸化炭素は、再び、植物が光合成で吸収します。それをずっと繰り返しますから、植物がなくならないように管理すれば、地球温暖化には寄与しません。こういう性質を“カーボンニュートラル”といいます。家畜の糞尿からつくられるバイオガスに含まれる炭素も、もともとは家畜が食べた植物が光合成で空気中から取り入れたものですから、これもカーボンニュートラルで、燃やしても地球温暖化には寄与しません。麦わら、稲わら、生ゴミ、糞尿、木屑など、植物起源のものを“バイオマス”と言い、バイオマスは、カーボンニュートラルです。
  日本は雨が多く植物が育ちやすい国で、森林面積67%の森林大国、バイオマス大国です。今まで活用していなかった日本のバイオマスをエネルギー源にすることは、

・カーボンニュートラルだから、燃やして発生した二酸化炭素は、地球温暖化に寄与しない。
・資源の有効利用になる。
・エネルギー自給率を高める。

という、一石三鳥の効果があるんですよ。

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